Friday 16 November 2012

業績管理について思うこと

現在読んでいる本の中で、素晴らしい箇所にあったので紹介させてください。

<blockquote><p>「リーダーは年がら年中、意識のうえで部下の査定をしなければならない」とブラウンは語る。「また、その評価を常に部下に告げなければならない。自分が部下をどう見ているかを伝える機会は、一年に二十回、三十回、いや六十回だってある。機会をみすみす逸してはならない。もし年度の終わりに上司から告げられたことに心底驚く部下がいたら、それはリーダーの責任だ」</p></blockquote>
通常、業績評価またはPerformance Reviewは年に二回行われます。しかし、これは年に二回行えばいいということではなく、せめて半期ごとにパフォーマンスをフォーマルに振り返らなければ、年間を通してのパフォーマンスのマネジメントを行ったとは言いにくくなるということだと思います。本来なら四半期ごとにパフォーマンスを振り返るべきだと思うのですが、これをフォーマルに行うと、人事部及びマネジャーへの負担が大きくなるため、フォーマルなレビューは年に二回にとどめている会社がほとんどです。

本来の姿は、必要とあればいつでもすることです。たとえば、パフォーマンス上問題のある行動を見つけた場合には、年に二回の業績評価まで待つ必要はありません。できるだけリアルタイムでそのことを指摘し、改善を呼びかけるべきです。その上で、改善できるようにサポートを与え、それでもだめであれば、さらに指摘を行う。その結果、改善が見られればフォーマルな業績評価では、改善が見られたと書くことになるでしょうし、改善が不十分であれば、そのように書くことになるでしょう。そうであれば、社員が驚くことはありません。

しかし、問題のある行動を見つけ、メモを取っていたとしても、そのことをリアルタイムに指摘していなければ、社員は、そのことを業績評価で指摘されれば驚くでしょうし、何よりも、上司が改善が必要と思っていたのなら、その時点でそう言って、本人に改善をするチャンスを与えるべきだったと感じるでしょう。それを怠ったとすれば、上司が部下を貶めようとしていたか、上司がパフォーマンスをマネジメントしていなかったかのどちらであり、いずれにしても深刻な問題です。

その点を上の引用は簡潔に突いています。本当にすばらしいです。引用では「リーダー」と書いていますが、この内容は、部下をもつマネジャー全員に当てられたメッセージだと思います。

Thursday 15 November 2012

進化する力

個人としても、組織としても、もっとも必要な力を一つ挙げるとすれば、私は、進化する力だと思います。進化と言えば、ダーウィンの進化論を思う人も多いでしょう。環境に適応して種が変遷を遂げていく様子を進化とダーウィンは捉えました。生物学的な用語ですが、私はこれを個人と組織にも当てはめたいとおもいます。

組織について考えましょう。組織は、組織を取り巻く環境に応じて変化をしていく必要があります。とりわけ、ビジネスのニーズ、顧客の変化、ビジネス環境を取り巻く技術の変化などに適応して組織の変革を怠れば、組織の衰退さらには崩壊を招くことがあるのは、様々な例が教えてくれます。環境に適応して変化を遂げることが進化ですから、進化する力は組織にとってきわめて重要です。

個人についても同じです。必要とされるスキルや能力は時代により変化します。また望ましいとされるリーダーシップのスタイルも時代により変化します。また、日々のビジネスシーンにおいて、失敗から学ぶことも大切です。他人の発言や洞察からヒントを得ることも大切です。また、新入社員として入ってから、一年、二年と時間を経るにつれて、成長を遂げ、戦力となることも、日々学習することの積み重ねです。学習とは、新しい発見に適応することです。成長=進化と考えれば、個人についても進化する能力がとても大切だと言えるでしょう。進化を怠れば、個人の成功はおぼつかないはずです。

日々進化し、個人が成功をつかむ応援をしたいと思います。


Wednesday 14 November 2012

カズとリーダーシップ

フットサルのワールドカップで、日本は惜しくもベスト8入りを逃しました。カズが好きな選手のひとりということから応援していたので残念です。

現在45歳になるカズをフットサルのワールドカップ代表に入れたるという決断は、戦力の点でいろいろ迷うところもあったと思うのですが、人事戦略から考えると正しい判断だったと思います。それは、カズのリーダーシップの質が高いからです。

リーダーシップの定義は難しいのですが、リーダーシップに期待される一番の役割は、組織を勝利に導くことです。これは、今回のようなフットサルのチームだろうが、大企業だろうが差はありません。フットサルの場合は、勝利とは文字通り試合に勝つことであり、目標としていた地点まで到達することです。

ピッチ上でリーダシップを発揮する人もいれば、ピッチを離れてもリーダシップを発揮する人がいます。カズは間違いなく、どちらでもリーダシップを発揮する人です。カズというブランドで世間の注目をフットサルに集め、45歳になっても現役にこだわり、それを維持するために努力する姿に、フットサルのメンバーは鼓舞されたことでしょう。それが、初のグループリーグ突破という快挙を呼んだのだと思います。

このようなリーダシップを発揮する選手を、現役から外すのは非常に勿体ない。1998年のフランスワールドカップでカズは日本代表から外れましたが、私は、たとえピッチに出すのが10分だけだったとしても、カズをワールドカップ代表に招集するべきだったとおもいます。彼のリーダーシップがチーム全体に与えた影響は相当あったはずだからです。

室の高いリーダーシップはなかなかあるものではありません。みなさんの組織にもカズのような存在の人はいませんか? 

Tuesday 13 November 2012

「米大学への留学、中国人23%増 日本人は6.2%減 」に思うこと

米大学への留学、中国人23%増 日本人は6.2%減という記事が日経新聞で11月12日に掲載されています。日本人の留学生は7年連続で現象となり、ついに2万人を割ったという内容です。一方、中国は3年連続で米国における留学生の数で1位に立ったというものです。

衝撃の割に記事の内容が簡潔なので、情報元を調べてみました。米国の国際教育研究所というのは「Institute of International Education」のことで、今回の発表は「Data from the 2012 Open Doors Report was released on November 12」によるものです(Firefox + MacOS Xでは表示できません。Safari + MacOS Xで試してください)。

米国における留学生の数では1位が中国、2位がインド、3位が韓国。日本は7位にランクされています。増加の激しかったのはサウジアラビアで前年度と比べて50%増加。減少が激しかったのはタイで7.4%減少。

人材のグローバル化が必要と言われている中で、この数値は危惧すべき状況です。特に、韓国が7万人以上の留学生を米国に送り出していることは、人材の競争力という点で優位性を築いているとも言えます。米国の大学を卒業し、日本語もマスターした韓国の学生が日本の会社での就職を希望した場合、海外経験のない日本の学生が就職戦線で戦えば苦労するの間違いありません。国家レベルで人材の国際化をサポートできないかなと思います。

Monday 12 November 2012

管理職の女性割り当て論について

2012年11月11日の日経新聞で、「管理職の女性割り当て」について記事が掲載されています。日本では女性の割合が低く、記事によると管理職で約10%、役員で約1%だといいます。この状況を改善するために役員・管理職の一定の割合または一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を導入しようという議論が起こるのは健全なことだと思います。

ただ、これには様々な問題をクリアする必要があります。
(1) クオータ制により、本来の平等の精神に反しないか?
(2) クオータ制により、評価の正当性という議論がすり替えられないか?

一つ目の問題点ですが、仮に全社員の女性比率が50%なのに管理職に占める女性比率が10%しかないのであれば、これを50%まで引き上げようと努力することはフェアだと思われます。しかし、全社員の女性比率が10%なのに、管理職に占める女性の比率を50%に引き上げようとするのは、男女の平等という精神に反すると思われるでしょう。
仮に役員の一定数を女性にするというクオータ制を導入した場合、たまたまパフォーマンスの低い役員が女性であるために、それを男性の優秀な役員候補と取り替えることができないという弊害が起こるとしたら、制度のマイナス面ということになります。
もちろん、それくらいの犠牲を伴わないことには改革を進めることはできないのではないかという意見は強力です。その点はもっともだと思うのですが、クオータ制には導入の仕方によっては思わぬ弊害が起こるリスクを軽視していいという主張にはならないでしょう。
私が思うに、第一歩として、上場企業に対しては、全社員の女性比率に加えて役員の女性比率と管理職の女性比率を公表することを義務付けるのがいいのではないかと思います。21世紀において女性の優秀な能力を活用できない組織が生き残ることは難しくなるでしょう。この情報が株式の世界でも公表されることで、株価にも影響を与えることになれば、企業は管理職・役員に女性をフェアに登用しているか真剣に取り組む必要にかられるでしょう。

2つ目の問題は、クオータ制そのものの問題というよりは、評価制度そのものに根ざす問題です。評価制度はフェアでなければなりません。しかし、制度上の課題や、評価に関連する様々なバイアスのため、どれくらいフェアな評価制度が実施されているかは各組織において頭の痛い問題です。恐らく、これまでの日本の組織では、2名の管理職候補がいて、片方が女性で片方が男性であった場合に、パフォーマンスに関係なく女性を管理職候補から外すという判断がされていたことが多かったのでしょう。これはアンフェアな判断です。しかし、上の状況で、パフォーマンスに関係なく男性だから管理職候補から外すことも同じようにアンフェアな判断です。大切なのは、男女に関係なく、パフォーマンスをもとに判断されるかということです。それがフェアという精神なのですが、その議論がクオータ制にすり替えられてはいけません。

クオータ制の議論を機に、組織はフェアな評価・登用が社内でされているかチャレンジして、さらに評価・登用制度の信頼度を高めてほしいと思います。

応援ありがとうございます。

Sunday 11 November 2012

シニア人材に思う

先日、定年を迎えた方のお話を小耳に挟みました。その中で感じたことは、まだまだ現役として働ける人たちを活かす方法はないのだろうかということです。60歳定年は、平均寿命がまだまだ低かったときの時代の遺産で、今後は定年65歳になるでしょうが、その時にはさらに平均寿命が伸びて、70歳までバリバリ仕事のできる人が増えているでしょう。そういった才能をどうにか活かしたい。

考えついたのは、次の質問です。
(1) 働く女性をサポートする形でシニア人材を活かせないだろうか? 子供を育てる女性・男性の労働力が2/3になるとして、残りの1/3をシニア人材で補うという考え。この方法だと、双方にフレキシブルな時間を提供できます。
(2) 新卒の初年度にメンターとしてシニア人材を起用できないだろうか? つきっきりというのではなく、やはり、半日だけシニア人材が新卒の面倒を見るという形にします。

恐らく、上のようなイニシアチブは取られていて、私が知らないだけなのかもしれません。ただ、ポイントとなるのは、シニア人材の報酬だと思います。子育てを終わったシニア人材は多額の資金を必要としていないはずです。彼らが必要なのは、自分たちが必要とされているという実感と、時間の都合と、フェアな報酬です。したがって、比較的安価にシニア人材の労働力を手に入れる方法が確立することが大切なのだろうと思います。

この点に関しては私も勉強が足りないので、もう少し勉強してみます。

Saturday 10 November 2012

10 books for an effective HR Business Partner - 2/10

前回では、マネジメントの仕事を理解することが重要だという点について触れました。しかし、人事という機能はマネジメントに追随すればいいというわけではありません。企業においては、マネジメント対一般社員という構図があり、その両方の代弁者という役割を人事は担っているのです。

企業を考える上では、組織と個人という構図もあります。組織と個人が切り離された存在であるかのように捉える考え方もありますが、おそらくは、それぞれが関係性の中で存在するものであるという考え方が主流でしょう。つまり、組織と個人は影響を及ぼしあう個別の存在なのです。チャーチル元英国首相はかつてこのように言いました。
We shape our buildings and afterward our buildings shape us.
個人が建物をつくり、建物が個人をつくるというこの観察は、組織と個人に当てはまります。つまり、個人が組織を形作り、組織が個人を形作るのです。これが関係性です。優秀な人事プロフェッショナルは、組織とはどういうものか、個人はどう行動するのか、そして組織と個人の関係性において行動はどう変化し形作られるのか理解する必要があります。

これは、組織行動学(Organizational Behaviour)の分野です。私が「Essentials of Organizational Behavior」を推薦するのは、これが組織行動学について最もポピュラーな書籍であることと、英語と日本語の両方が手に入ることです。ただ、日本語版は英語版よりは版が遅れているため、英語力に不安がなくい方は英語版を手に入れることをお薦めします。

この本によると組織行動学は「個人、グループ、そして組織構造が組織内で行動にどういう影響を与えるか研究する学問」(Study of the influence that individuals, groups, and organizational structure have on behavior within organizations)と定義されています。そして、その主な目的は「組織行動学の知識を使って組織の効果を高めること」(to apply that knowledge toward improving an organization's effectiveness)と定義されています。組織がより効果的になるというのは、人事の目的ですから、組織行動学の知識が優秀な人事ジェネラリストに必要というのは、この点からも明らでしょう。ぜひ読んでほしい本です。


Wednesday 7 November 2012

英語は道具か?

かつて日本の企業に勤めていたとき、海外赴任を希望した私に会社が言ったのは、「語学は道具だ」という主張でした。単なるツールに過ぎないのだから、それ にこだわるのであれば、通訳にでもなりなさいという説明を受けました。しかし、11月7日の日経新聞の記事「非鉄が人材育成強化」という記事を見ると、果 たして、そうだったのかと思います。記事によると、「JX金属は来年初頭から入社二年目の大卒、大学院卒社員全員にフィリピンでの英語研修を義務付ける」 とあります。

確かに、言葉はコミュニケーションのツールです。しかし、仕事のほとんどはコミュニケーションが占めることも事実です。よく 言われることですが、体にとって血流が大切であるように、企業にとってコミュニケーションは大切です。血液の流れが止まれば、死は避けられない必然の結果 です。同様に、コミュニケーションが支障をきたせば、組織の運営に異常が生まれます。言葉がコミュニケーションの道具だから、語学は道具だと主張するのは 無理があると言えるでしょう。

問題は、語学力のある社員に優先的に海外経験の機会を与えるべきかどうかという点でしょう。才能や経験に関 係なく機会は平等に与えるべきだというポリシーに立てば、語学力のある社員に優先的に海外経験を与えるのは不公平と映るでしょう。しかし、社員一人一人の 能力を積み重ねて組織としての能力(Organisational capabilities)を作るというのがもっとも大切な原則のはずです。そもそも、経営とは、ヒト、カネ、モノという限りある資源を最適に使うことで 結果を出すことです。ヒトに関して言えば「適材適所」がモットーでしょう。その観点からすれば、語学力のある社員に優先的に海外経験を与えるのは自然な選 択です。

それに対して言い訳を企業がするのであれば、その企業がグローバル化に対応していないということでしょう。現在においてグローバ ル化は既存のコンテクストですから、グローバル化に対して言い訳をすることはできません。グローバル化が遅れているのであれば、会社はグローバル化を促進 するような社員の行動に対してインセンティブを与えるべきでしょう。そのためにも「語学は武器」と捉えて人事政策をつくるべきだと思います。

Two advocacies

 みなさんは、「advocacy」という英語の単語をご存知でしょうか? もともとは、 動詞の「advocate」から派生した単語です。「advocate」とは「代弁する」という意味です。「advocacy」は代弁、代弁者という意味になります。 HRにはふたつの「advocacy」...