Thursday 18 August 2022

HRに関して思うこと - 007

報酬(Reward)もHRにとっては大切な分野ですね。

給与計算とは違います。

実際、給与計算はアメリカでは経理部で行っているところもあるくらいです。やはり、給与計算はオペレーション的な要素が強いと思います。

報酬は、制度的な側面が強いでしょう。そして、大きく分けると二つに分かれます。

  • Pay 
  • Benefits

Payというのは給与や賞与で、さらに

  • Fixed pay(固定報酬)
  • Variable pay(変動報酬)

に分かれます。

Benefitsというのは、企業年金や健康保険などいわゆる福利厚生を指しますが、フレキシブルワーキングも含まれます。

ところで、報酬の目的は何でしょうか? CIPDではこんなふうに定義しています。

The main reason for offering pay and benefits is to influence employee behaviour so they want to join and stay with an employer and to do their best in the job.

上を読んではっとしました。

狙うのは、望ましい行動を生み出すこと。

もちろん、強制はできないので、報酬をデザインすることで、望ましい行動を社員が生み出すように影響するというのが目的です。

本社人事ではなく、各国の人事として業務に携わっていると、報酬の実際に時間を割くため、いや、このbase salaryは高すぎるだろうとか、promotionするのにbase salaryを与えないのはおかしいだろうとかいう話が多く、逆に、このやり方で、望むべき行動が生まれているのかという本質的な議論はすることがあまりありません。

だからこそ、Country Head of Human Resourcesは時には本質的な議論を課す必要もあるのかなと思いました。

Wednesday 17 August 2022

HRに関して思うこと - 006

 今日で、採用(Recruitment)に関する雑記は終了しますが……

やはり、採用に関する判断は難しい。人の判断は、時間帯によっても異なるそうです。それだけ、ぶれやすいということなんでしょうね。

だからこそ、採用に関する条件は同じにするべきとのことです。例えば、

  • 職務経歴書を印刷して面接に望むのなら、すべて、印刷した職務経歴書をもたすべき
  • Face to faceで面接をするのなら、全候補者に対してそうすべき。この人はFace to faceで会って、別の人はRemoteというのは条件が異なることになるから避けるべき
  • できるだけ同じ時間帯で候補者を面接するほうがいい
「面接の条件を同じにすることが、フェアな判断を担保する鍵となる」という言葉には、まさにそうだと納得しました。こういう点はHRとして、面接担当者に付加価値を出せる点かなと思いました。

Tuesday 16 August 2022

HRに関して思うこと - 005

CIPDのドキュメントを読んでいます。

内容は採用。

Structured interviewってありますよね?

GoogleとかAmazonとかがやるインタビューで、質問が最初から定義されており、それぞれを各面接者が行っていくというものです。

ぼくはてっきり、

Structured interview > Unstructured interview

と思っていたのですが、調査ではそうとは言い切れないのだとか。つまり、Structured interviewにも弱点はあるし、Unstructured interviewにも利点があるそうです。

結論としては組み合わせるのがいいそうです。

ということは、

  • HR; structured interview
  • Hiring Manager: unstructured interview

というやり方もいいみたいですね。


Monday 15 August 2022

HRに関して思うこと - 004

採用は難しいよ。

そんな声を聞きます。

逆に、採用は簡単だよという声は聞きません。

どうしてかというと、判断に関係するからです。

候補者が10年以上にわたって築いてきたキャリア。どんなことを学び、どんな専門性を築き、どんなふうに組織の中で働いて、どんな成果を出してきたのか。

わずか60分と職務経歴書で10年分を判断する。

簡単なわけがないですよね。

逆に、候補者からすると、10年分のすべてをわずか60分と数枚の職務経歴書で表現できるのか。

だからこそ、人材紹介会社が間に入って、生きた情報を提供したりして、付加価値を出す機会があります。

また、候補者も、面接者も、採用面接に先立って準備をします。

というか、準備をしているはずなのですが、実際はどれくらい準備をしているのでしょう?

少なくとも、面接者は二つの観点から準備をしてほしいとHRとしては思います。

  1. 面接の精度をあげる
  2. 会社のブランドを高める

特に二点目は大きいですね。面接者しだいで、いい会社だと思ったり、ひどい会社だと思ったりします。

待たされたあげく、上から目線の面接。

これだと、面接者ひとりの問題が、会社とのエクスペリエンスとして、一人歩きをします。あそこはひどい会社だと。

面接をしてから、結果が全然来ない。

これもいけません。面接をしたら、結果を通知するのが礼儀でしょう。結果を通知しないのは、レスペクトの欠如です。

まずは、やめるべきことを認識して、ひとつずつやめていきましょう。そして、やるべきことをやりましょう。

Employer brandingです。

Saturday 13 August 2022

HRに関して思うこと - 003

採用(Recruitment)の前に、人員計画(Workforce planning)が重要なのは当たり前ですが、採用が重要でないわけではなく、また、採用が簡単なわけでもありません。

実際、採用に失敗した例は枚挙に暇がないと言ってもいいでしょう。

かく言う私もやらかしてます。二人の候補者から迷って採用したものの、あとから、別の人を採用すればよかったと悔やんだり、この候補者は採用するべきじゃないと言ったにも関わらず、採用が進んでしまい、入社して試用期間が進んだところで、やはり、懸念していた問題が表面化したり……

CIPDでは、採用を次の四つのプロセスに分類しています。

  • Defining the role
  • Attracting applicants
  • Managing the application and selection process
  • Making the appointment

つまりは、

  • 採用するポジション(role)を定義する
  • 候補者を集める
  • 応募のマネジメントと選考
  • オファー・マネジメント

ということです。HR professionalには新鮮でもなんでもなく、知っている内容ですが、分かっているのは、これをすべてしっかりこなすことは簡単ではないということです。

Defining the role

まず、ポジションの定義ですが、わかりやすい成果物は job description つまり職務内容定義です。外資系では当たり前の書類ですが、日本の企業ではそろっていますか? いや、外資系であっても、採用をしたいという割には、まだ、job description がありませんなんてこともあります。

Attracting applicants

候補者を集める方法はいろいろあります。社内の候補者を考慮するというのはすばらしい方法です。また、社外の候補者を集めるのも有力な方法です。会社のウェブサイトに掲載したり、job board に掲載したり、あるいは、人材紹介会社にお願いする方法もあります。

最初に考えた方法で応募があまり集まらないときに打開策を提案するのは、HRの腕の見せ所です。一方で、先に人材紹介会社にお願いをして最終候補者を何名か絞ってから社内の候補者も考慮するというのはお勧めできません。人材紹介会社にとって、時間のムダとなる可能性があり、そのようなやり方を続けていては、人材紹介会社との関係が悪化する恐れがあります。

Managing the applicants and selection process

おそらく一番頭を悩ますのは、このプロセスです。ときに、素晴らしい候補者を見落とすこともあります。逆に、要求とは外れている候補者を選んでしまうこともあります。

なぜ失敗するのでしょうか?

間違った質問をしたというのもあります。本来、job description を作成した時点で、好ましい候補者を定義しているはずですから、まずは、職務内容を経験しているのか、どのような働き方をしているのか、質問を用意しておくべきですが、そうでないケースが多々あります。これでは、そもそも、判断のしようがありません。

さらに、判断に間違うことが多々あります。

結局、人間はさまざまなバイアスにより判断の客観性が脅かされています。人を判断することは、思ったより難しいのです。どうしても、自分に似た候補者を好きになるというのは有名なバイアスですが、これに抵抗することは難しいでしょう。

しかし、あらかじめ、質問・面接者・ステップを決めておけば、こういった間違いは少なくすることができます。

Making the appointment

日本の会社だと、内々定、内定という形ですが、外資系では、次のステップを踏むことが多いと思います。

  • Verbal offer
  • Written offer
  • Pre-employment screening

Pre-employment screeningはリファレンスをもらうというのではなく、候補者のバックグラウンドの確認です。◯◯大学卒業と言っているか、本当だろうか? 職歴に間違いはないだろうか? 中国では学歴詐称は日本の比ではないので、さまざまな国籍の社員を採用する企業は、たとえ日本の企業であっても、Pre-employment screeningは行うほうがいいと思います。個人的には、政党も候補者を立てる前に、こういったチェックを第三者にしてもらうのがいいのではないかと思います。

以上、採用をざっと見ましたが、二人の候補者で迷ったらどうするか?

その時の私の回答はシンプルです。性格または人柄がいいと思う候補者を選ぶことです。

Friday 12 August 2022

HRに関して思うこと - 002

採用(Recruiting)はやっぱり大切だなと思います。

なんと言っても、HRのLife cycleの最初の方に位置します。「最初」ではなく「最初の方」と言う理由は、本来、HRのLife cycleからすると、一番最初にあたるのは次のものだからです。

Workforce planning

「人員計画」ですね。人によっては、human resource planningと言う人もいますが、それだと、人事部計画と誤解される恐れもあるので、やはり、「workforce planning」です。

Workforce planningの基本は次の英語に要約されていると思います。

Workforce planning is the process of balancing labour supply (skills) against the demand (numbers needed). [...] It's about getting the right number of people with the right skills employed in the right place at the right time, at the right cost and on the right contract to deliver an organisation's short and long-term objectives. (CIPD)

 まずは、人員というよりは人材に関して、社内の需要と社内外の供給のバランスを保つこと。人の数は足りているが、スキルが足りてないのでは、Workforce planningがうまく行っているとは言えません。満たす必要があるのは

  • 人数
  • スキル
  • 採用先(配置先)
  • タイミング
  • コスト
  • 契約形態

最近は、採用に関しては、HRから切り離したり、外部にアウトソースしたりするケースが増えてきているように思います。これは、採用オペレーションという観点からは正しいと思います。

一方で、HRBPには、上で述べたWorkforce planningが残ります。HRBPは自分の担当部署がWorkforce planningを満たしているか常に問題意識をもつことが必要だと思います。一方、Head of HR Japanなら、日本の拠点ににおいてWorkforce planningが満たされているのかという問題意識をもつことが求められていると思います。

基本といえば基本ですが、基本をどれくらいこなしているかがExcellenceにつながるので、少しつぶやいてみました。



Monday 8 August 2022

Performance Reviewは難しい

Performance reviewは難しい。

何年関わってもそう思います。

こうすれば、伝えにくいことも伝わるとか、改善してほしいことを理解してもらえるとか、マネジャーとメンバーの間のギャップを埋める効果的な言葉とか、いわゆる特効薬はないのです。結局、魔法の杖は存在しないのです。

ただ、原則はあります。

  1. Honest and transparent
  2. Recognise both qualities and weaknesses
  3. Put the conversation in writing

やはり、単刀直入に言うに限ります。「少し嫌なこと言います」とか先に言ってから、改善点をひとつ述べる。そして、反応を見る。その反応に対して率直に思うことを端的に述べる。あくまで、感情は抑えながら。

この原則に従いながら、場数を踏むことで、スキルを高めることができます。

それから、評価をするときには、よくできたことと、できなかったことを述べます。

  • what you did well
  • what you could have done better

できなかったことだけ言うと、個人攻撃に見えるリスクが高まります。できなかったことを言うのは改善してほしいから。改善してもらうためには、こちらのポイントを受け入れて貰う必要があります。そのためには、いいところも認めていることを伝えるほうがいいでしょう。

 さいごに、話した内容を文章にします。通常は、会社が提供しているシステムに入れるのですが、ここが弱いことがとても多い。曰く、きついことを書くとかわいそうだから。

本当にかわいそうなのは、そうやって、情けをあげることで、緊急度が伝わらないこと。そもそも、Performanc reviewで改善点を言わないと行けないということは、相当、煮詰まっている段階です。ちょっとしたことなら、日頃のかんたんな会話で言えばすみます。

だから、しっかり書きましょう。たとえば、

  • You failed to meet the deadline despite repeated reminders on a few occasions. Theses failues caused unnecessary trouble and workload to the stakeholders. Please do meet the deadlines going forward and speak to me in advance in case you see a risk of failing to meet the deadline.

と言った具合です。でも、これをこんなふうに書く人が多い。

  • You should meet the deadline and speak to me in advance in case you find it difficult to do so.

これだと、失敗したという事実が伝わらないので迫力と緊張感が希薄になります。もちろん、最初のモデル例のようなコメントを書く際には、具体的な失敗例を提示できるようにしておくことが必要です。

 

Sunday 7 August 2022

HRに関して思うこと - 001

世の中で言われる「人事」という仕事に携わって20年。もっとも、日本の会社ではなく、外資系ですので、「人事」というよりは「HR」というほうがしっくり来ます。

外資系と日本の会社と「人事」は違うのかと思う方!

良い質問です。

ぼくは外資系の「人事」しかやっていませんので、体験というよりは、小耳に挟んだことからしか言えませんが、「人事」と「HR」は違うと思います。

そもそも、中の部署が違う。たとえば、「人事企画」というような部署は外資系の「HR」では見かけません。そのため、募集要項や組織図を見ていて、「人事企画」とか書いてあるのを見ると、いつも戸惑ってしまいます。

21世紀において、「HR」には大きくわけて二つの側面があることは世界では常識となっています。 

  • Transactional/operational HR
  • Strategic HR

日本の会社では、「人事」=事務=Transactional / operational という見方がまだまだ根強いと思います。その例が、人事部がCorporate(コーポレート部門)と呼ばれる部門の下に位置づけられていることです。

この下には、経理、総務、経営企画、法務に加えて人事がぶら下がっているというものです。これを見ると、この会社は日本的だなと感じてしまいます。コーポレート部門の下にぶらさがっているということは、社長またはCEOへの直接レポートするわけではなく、コーポレート部門のヘッドを通してになります。世界のトレンドは、HRは戦略的に重要な部門なので、CEOに直接レポートしているというものです。

実際、外資系では、HRはCEOに直接レポートしています。

日本の会社は、HRのTransactionalな側面を主に見ているのに対して、外資系では、Strategicな側面を期待しているのだと思います。 

最後に、日本の会社に対する提言です。

みなさんの人事部をCEOの直下に置いてください。そして、人事部により戦略的な機能を果たすよう求めてください。ぼくの考えでは、日本の産業が元気がないのは、人事部に対する時代遅れな考えが理由です。

Two advocacies

 みなさんは、「advocacy」という英語の単語をご存知でしょうか? もともとは、 動詞の「advocate」から派生した単語です。「advocate」とは「代弁する」という意味です。「advocacy」は代弁、代弁者という意味になります。 HRにはふたつの「advocacy」...