Saturday 27 May 2023

People or HR and high performing culture

つまらない話題かもしれませんが、ときどき、人に関することを、「HR matter」と呼ぶクライアントがいらっしゃいます。

そのたびに、内心では心を痛めております。

違うんだよな、だって、「HR matter」と言うと、「人事部門の課題」ということになってしまうから、「people matter」と呼ぶほうが誤解は少ないし、「HR matter」と呼ぶことで、深層心理では、人に関することは自分たちのことではなく、人事部門がやってくれることだと思っているように思うからです。

こういうとき、その場で訂正するほうがいいのでしょうか?

こういう用語の使い方をするクライアントは、HR planとPeople planの違いがわからないのかもしれません。

初めてPeople planを作ったとき、その違いを説明するためにスライドを一枚追加したことがあります。

- People plan: 組織における人に関する政策・計画
- HR plan: 人事部門の政策・計画

上の考えは、David Ulrich氏が本の中でも明確に違いを謳っていますが、ひょっとしたら、人事部門の中でも、この違いを意識している社員は意外と少ないかもしれません。何人のHR professionalsがこの違いを的確に説明できるのでしょうか? 

HRとPeopleの違いは重要だと思います。Peopleと言ったとき、そこにあるのは、人の話は組織全体の話であるが、人事部門のリーダーシップのもとに各部門と人事部門がパートナーシップを築きながら推進していくという枠組みです。この重要な枠組みを担保するのが、Peopleという言葉だと思います。

だからこそ、最近はChief Human Resources OfficerというよりはChief People Officerというタイトル名が増えてきているのだと思います。会社における人員政策の責任をもつことをHRのトップが期待されているということです。

でも、現在はCulture transformationが期待されているので、そのうち、Chief People & Culture Officerみたいな名前もだんだん増えて行くのかもしれません。

ところで、Culture transformationですが、私は、Silver bulletがあるとは思いません。つまり、これをすればCulture transformation確定みたいな特効薬はないと思います。でも、既存のスキームやプログラムを組み合わせることで、Silver bulletに見えるようなソリューションを提供できるのではないかと思います。

たとえば、high performing cultureを推進したい。言うのは簡単ですが、行うのは難しい。まず思うのは、現在high performing cultureでないとしたら、どんな側面なのか? たとえば

1) 高いパフォーマンスを目指す人が少ない→現状で満足する人が多い
2) 高いパフォーマンスに報いる制度がない

2つ目の質問は複雑です。パフォーマンスが高くても低くても賞与や昇進・昇給にあまり直結しないのか、高いパフォーマンスを上司が勘違いしているのか?

こんなとき、まずは、Executive memberとHR Leaderが1:1で話し合いをして、high performanceとはどんなことを指すのかヒアリングを行い、それをまとめてコンセンサスを得たものをPeople Leaders及びStaffと共有し、それを評価する、その上で、その成果を図るという仕組みが有効かもしれません。

みなさんは、どんな考えをおもちですか?



 


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Saturday 20 May 2023

Culture transformation (1)

最近のHRの流行といえば、Culture transformationでしょう。

変革を迫られない企業はないでしょう。技術変革、プロセス変革、そして、企業文化の変革。企業文化の変革はHRの領域だという主張です。

企業文化 (organisational culture) は、そもそも定義が難しいのですが、定義をしないことには、変革をすることはできませんよね。CIPによると

Culture is not one dimensional, fixed, or singular in its nature. It is the result of interacting people, processes, procedures, systems and networks (CIPD, 2016). 

「 文化は、性格から言って、一つの次元で語れるものではありませんし、固定したものでも、単一のものでもありません。人々同士のインターラクション、ワークプロセス、仕事の手続き、システム、そしてネットワークの結果が文化なのです。(和文は私訳です」

行動科学の研究によると、規則で縛られた環境は、ポジティブな文化を作ることができず、逆に、意図しない、願わない結果につながると言います。たとえば、個人の責任感など一切なくただ規則に従ったりする行動です。 

今朝、CIPDの書類を読んでいたのですが、企業文化ではなく、organisational climateというのがあることを知りました。

An organisational climate is widely defined as the meaning people attach to certain features of the work setting. It’s the feeling or atmosphere people have in an organisation, either day-to-day or more generally.

企業天候は、人々が仕事のセッティングのある特徴につける意味を指すそうです。日々の体験であろうが、一般的な体験であろうが、人々が組織の中でどのような感情や雰囲気をもっているか。

すでに成立しているorganisational climateのひとつに、safety climateというのがあるそうです。

This concerns employees’ perceptions that an organisation’s policies and practices contribute to workplace safety. A safety climate also focuses on what influences the safety of behaviour, for example whether an organisation encourages learning from mistakes or favours punishment. .
これを見て思ったのは、一般に行われているEmployee Engagement surveyというのは、organisational cultureを測るものではなく、organisational climateを測るものではないかということです。たとえば、失敗から学ぶ風潮が多いと思うか、それとも、失敗を責める風潮があるかという質問はEmployee Engagement surveyにはよく登場すると思います。

天候は時間とともに変わります。organisational climateも毎日変わるものなのかもしれません。常々、Employee Engagement surveyは社員の感情に左右されると思ってきましたが、Employee Engagement surveyがorganisational climateを測定対象としているのであれば、完全に納得が行きます。organisational climate = feeling / atmosphere ですから。

正直、Culture transformationに関する本はありますが、コースはあまりないため、HR professionalsがこの分野をしっかり学習する機会は少ないと思います。自分もまだまだ学習過程にありますが、別の機会に学んだことをシェアしたいと思います。



 


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Saturday 13 May 2023

UK update: Smarter Regulations to Grow the Economy

 英国の話です。

 People Managementによると、英国政府が雇用・労働に関係する法律の改定を考えているそうです。

Non-compete clauses, TUPE and Working Time Regulations in the spotlight of government proposals – what could this mean for employers?

記事によると、Non-compete(競合禁止)期間が最長3ヶ月に制限がかかる可能性があるとのこと。これにより、労働者の権利は守られるとしていますが、一方で、企業にとっては、労働者が短い期間で競合他社に移ることになり、何らかのアクションを考えるのではないかと考える専門家もいるようです。

たとえば、Notice periodを長くするということですね。

日本では、Non-competeは法律で決められていないので、日本企業にとっては対岸の火事かもしれませんが、外資系企業の日本企業にとっては、影響が遅かれ早かれ生じる可能性がありますね。この手の条項は「restrictive covenants」といいますが、外資系企業では、契約書に入ることが少なくないでしょう。英国に本社がある外資系企業の場合は、この条項の見直しがグローバルに通知されるかもしれません。

もう一点興味深いのは、以下の英文です。

The government has also suggested removing retained EU case law that requires companies to record working hours for practically all members of the workforce; employers are now obligated to keep these to ensure the 48-hour working time restriction is adhered to.
おそらく、EUの法律で、事実上全従業員の労働時間を記録する必要があるのでしょう。それを除去することを政府が提案しているそうです。

どこかで聞いたことがあるないようですね。

日本でも、管理監督者であるかどうかにかかわらず、労働時間を把握するように求められています。このことを説明するときに上の英文が役立ちそうというのはいい(record working hours for all members of the workforce)として、これが重荷になっているという認識は、日本政府にはあるのでしょうか。

最後に、TUPEという用語を初めて知りました。いや、どこかで見たことはあると思うのですが、興味を持って調べてみたのは今回が初めてです。

TUPE = Transfer of Undertakings (Protection of Employment)

事業譲渡の場合に、その影響を受ける社員の保護を規定した法律と私は捉えましたが、日本にはあまり参考にならないかもしれません。



 


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Two advocacies

 みなさんは、「advocacy」という英語の単語をご存知でしょうか? もともとは、 動詞の「advocate」から派生した単語です。「advocate」とは「代弁する」という意味です。「advocacy」は代弁、代弁者という意味になります。 HRにはふたつの「advocacy」...