IMD学長「日本企業はグローバル化対応の人材育成を」
10月30日の日経新聞の記事から。
経済のグローバル化が言われて久しい。だが、グローバル化に対応できる人材を日本企業は育成しようとしているのだろうか? ビジネスの必要性から英語を勉強している会社員が増えているのは確かだが、英語力=グローバル化対応とは言えない。IMD学長デュルパン氏のコメントはとても興味深い。
『日本企業では海外経験が社内で評価されず、実際に経験が少ないまま幹部が経営者に昇進している』
思い当たるのは、私の新人時代の会社の反応である。語学力に問題のない私に対して、会社は、「語学は単なる道具であり、大切なのは仕事が出来ることだ」と主張して、早く海外経験をつませるべきだという私の考えをあしらった。ところが、海外赴任を経験した先輩社員は違う考えだった。語学ができないのに何を伝えられるのかというのである。およそビジネスはコミュニケーションで動くのだから、コミュニケーション・ロスは組織にとって重大な損失だ。
私は今でも語学力は道具ではなくて武器だと思っているが、それはともかく、ここで争点になるのは海外経験に対する価値である。低い語学力では海外経験をつませたところで、その効果は限定されてしまう。海外赴任には莫大な費用がかかるのだから、費用対効果を厳しく追求してしかるべきだ。だが、その点について会社のポリシーは煮え切らない。その背後にあった考えは、海外経験を軽視する風潮だ。デュルパン氏が言うように、「海外経験が社内で評価され」ないのだ。
デュルパン氏は、これを改善する方法として「経営層を海外から登用すると同時に、『キャリアが浅い段階から若年層に海外経験を積ませるべきだ』」と説いたという。
ここで英語力はまたしても問題になる。社内言語は英語にするべきかという議論の誘惑もあるが、ここでは、英語力という問題を外して、人材のグローバル化対応に関する準備があるかという次の質問をしてみたい。
(1) 海外現地法人で採用されたローカル社員が優秀で、海外現地法人の業績を上げた。そのローカル社員は日本語も堪能だ。果たして、組織にはそのローカル社員を本社の重大な役職に抜擢するつもりはあるか? もちろん、それを可能にする制度と運用がなければいけない。
(2) 海外現地法人で採用されたローカル社員が優秀で、海外現地法人の業績を上げた。そのローカル社員は現地の言語と英語を話すが日本語には対応できない。だが、業績の改善はめざましく毎年30%の成長を三年連続記録している。通訳をつけてでも日本本社の重大な役職に抜擢するつもりはあるか?
もし、二つの質問に対する答えがNoであるならば、組織の人材がグローバル化対応するには、道のりは遠い。だが、2つ目の質問に対してYesと言えるなら、道のりは近いのではないだろうか。
組織が持続していくためには、絶え間なく変化する環境に対応して進化を続けなければならない。組織を構成するのは個人だが、個人の行動を制限するのは組織だ。組織が成功を築くためにどのような判断を行うのか、そして判断を行うためにどのような質問をするのか? 個人と組織の意思決定及び質問の質、そして、進化能力が組織の能力ではないかと考えています。
Wednesday 31 October 2012
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