かつて日本の企業に勤めていたとき、海外赴任を希望した私に会社が言ったのは、「語学は道具だ」という主張でした。単なるツールに過ぎないのだから、それ
にこだわるのであれば、通訳にでもなりなさいという説明を受けました。しかし、11月7日の日経新聞の記事「非鉄が人材育成強化」という記事を見ると、果
たして、そうだったのかと思います。記事によると、「JX金属は来年初頭から入社二年目の大卒、大学院卒社員全員にフィリピンでの英語研修を義務付ける」
とあります。
確かに、言葉はコミュニケーションのツールです。しかし、仕事のほとんどはコミュニケーションが占めることも事実です。よく
言われることですが、体にとって血流が大切であるように、企業にとってコミュニケーションは大切です。血液の流れが止まれば、死は避けられない必然の結果
です。同様に、コミュニケーションが支障をきたせば、組織の運営に異常が生まれます。言葉がコミュニケーションの道具だから、語学は道具だと主張するのは
無理があると言えるでしょう。
問題は、語学力のある社員に優先的に海外経験の機会を与えるべきかどうかという点でしょう。才能や経験に関
係なく機会は平等に与えるべきだというポリシーに立てば、語学力のある社員に優先的に海外経験を与えるのは不公平と映るでしょう。しかし、社員一人一人の
能力を積み重ねて組織としての能力(Organisational
capabilities)を作るというのがもっとも大切な原則のはずです。そもそも、経営とは、ヒト、カネ、モノという限りある資源を最適に使うことで
結果を出すことです。ヒトに関して言えば「適材適所」がモットーでしょう。その観点からすれば、語学力のある社員に優先的に海外経験を与えるのは自然な選
択です。
それに対して言い訳を企業がするのであれば、その企業がグローバル化に対応していないということでしょう。現在においてグローバ
ル化は既存のコンテクストですから、グローバル化に対して言い訳をすることはできません。グローバル化が遅れているのであれば、会社はグローバル化を促進
するような社員の行動に対してインセンティブを与えるべきでしょう。そのためにも「語学は武器」と捉えて人事政策をつくるべきだと思います。
組織が持続していくためには、絶え間なく変化する環境に対応して進化を続けなければならない。組織を構成するのは個人だが、個人の行動を制限するのは組織だ。組織が成功を築くためにどのような判断を行うのか、そして判断を行うためにどのような質問をするのか? 個人と組織の意思決定及び質問の質、そして、進化能力が組織の能力ではないかと考えています。
Wednesday, 7 November 2012
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