Monday 12 November 2012

管理職の女性割り当て論について

2012年11月11日の日経新聞で、「管理職の女性割り当て」について記事が掲載されています。日本では女性の割合が低く、記事によると管理職で約10%、役員で約1%だといいます。この状況を改善するために役員・管理職の一定の割合または一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を導入しようという議論が起こるのは健全なことだと思います。

ただ、これには様々な問題をクリアする必要があります。
(1) クオータ制により、本来の平等の精神に反しないか?
(2) クオータ制により、評価の正当性という議論がすり替えられないか?

一つ目の問題点ですが、仮に全社員の女性比率が50%なのに管理職に占める女性比率が10%しかないのであれば、これを50%まで引き上げようと努力することはフェアだと思われます。しかし、全社員の女性比率が10%なのに、管理職に占める女性の比率を50%に引き上げようとするのは、男女の平等という精神に反すると思われるでしょう。
仮に役員の一定数を女性にするというクオータ制を導入した場合、たまたまパフォーマンスの低い役員が女性であるために、それを男性の優秀な役員候補と取り替えることができないという弊害が起こるとしたら、制度のマイナス面ということになります。
もちろん、それくらいの犠牲を伴わないことには改革を進めることはできないのではないかという意見は強力です。その点はもっともだと思うのですが、クオータ制には導入の仕方によっては思わぬ弊害が起こるリスクを軽視していいという主張にはならないでしょう。
私が思うに、第一歩として、上場企業に対しては、全社員の女性比率に加えて役員の女性比率と管理職の女性比率を公表することを義務付けるのがいいのではないかと思います。21世紀において女性の優秀な能力を活用できない組織が生き残ることは難しくなるでしょう。この情報が株式の世界でも公表されることで、株価にも影響を与えることになれば、企業は管理職・役員に女性をフェアに登用しているか真剣に取り組む必要にかられるでしょう。

2つ目の問題は、クオータ制そのものの問題というよりは、評価制度そのものに根ざす問題です。評価制度はフェアでなければなりません。しかし、制度上の課題や、評価に関連する様々なバイアスのため、どれくらいフェアな評価制度が実施されているかは各組織において頭の痛い問題です。恐らく、これまでの日本の組織では、2名の管理職候補がいて、片方が女性で片方が男性であった場合に、パフォーマンスに関係なく女性を管理職候補から外すという判断がされていたことが多かったのでしょう。これはアンフェアな判断です。しかし、上の状況で、パフォーマンスに関係なく男性だから管理職候補から外すことも同じようにアンフェアな判断です。大切なのは、男女に関係なく、パフォーマンスをもとに判断されるかということです。それがフェアという精神なのですが、その議論がクオータ制にすり替えられてはいけません。

クオータ制の議論を機に、組織はフェアな評価・登用が社内でされているかチャレンジして、さらに評価・登用制度の信頼度を高めてほしいと思います。

応援ありがとうございます。

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