みなさんは、「advocacy」という英語の単語をご存知でしょうか?
もともとは、 動詞の「advocate」から派生した単語です。「advocate」とは「代弁する」という意味です。「advocacy」は代弁、代弁者という意味になります。
HRにはふたつの「advocacy」があります。
- employee advocacy
- employer advocacy
まず、HRは社員の立場を理解する役目があります。従業員がどのように考えているか? Engageしているのかしていないのか。社員目線をもつことは重要です。
一方で、経営に近い位置にもあります。会社の人的資源が戦略とくらべて合致しているのかしていないのか。会社の人的資源をどのように進化させていく必要があるのか。経営層の立場で考えることも大切です。
しかし、もっとも重要なのはそのバランスです。
仮に、HRがemployee advocacyだけになってしまってはどうなるでしょうか? これでは、労働組合と変わりません。経営層はHRとは話したいでしょうが、労働組合とは話したいと思わないかもしれません。話しても、HRの言い分を信じてくれないかもしれません。また、従業員の権利と要求だけが大きくなり、それが、会社の利益と相反するようになれば、会社の利益も危うくなるリスクがあります。そして、社員と経営はバラバラになるでしょう。
逆に、HRがemployer advocacyに偏るとどうなるでしょうか? これでは、経営層と変わりません。自分たちの立場を理解しないHRに社員が話したいと思うでしょうか? 経営層は、会社の利益だけを目指し、社員の権利と尊厳はダメージを受け、その結果、労使関係はギスギスしていくでしょう。職場も荒れていくかもしれません。こちらの場合も、社員と経営はバラバラになる可能性が高くなります。
HRBPはERに近い領域で仕事をすることが多々あります。そのときに、ふたつのadvocacyのバランスを損ねると、マネジャーからの信頼が低くなったり、あるいは、社員との距離が大きくなったります。
どんな状態がバランスが取れていると言えるのか? それを言葉で表すことは難しいのですが、社員が言ったことを鵜呑みにして、社員の発言に問題がある場合に何も指摘しないときは、Employee advocacy > Employer advocacyです。逆に、うちのHRはマネジャーの言いなりだからと言われるような状況では、Employee advocacy < Employer advocacyと言えます。
いいバランスを取るには、まずは、ふたつのadvocacyがあることを理解すること。そして、時折、自分をその観点から振り返ること。そして、内省から改善へと意識を向けること。これを繰り返すことで徐々にできるようになると思います。
Striking a right balance between employee advocacy and employer advocacy is not a science, but an art. Art is based on the following principle: practices makes perfect.