Friday, 23 September 2022

HRに関して思うこと - 008

企業にとって、人材は重要なリソースです。

お金があっても人がいなければ企業活動は成り立ちません。 それも、ただ人がいればいいのではありません。必要な部署に必要な人材が配置されていることが大切です。いわゆる、適材適所というやつです。

Workforce planningは、そういう意味から考えても、とても重要なHRのフィールドです。そして、これに付随しているのが Recruitment & Selectionです。日本語では「採用」と読んでいます。

採用で頭を悩ましていない企業はあるのでしょうか?

調べたわけではないのですが、ないでしょう。世界中で人材を求めているのが自分の企業ひとつだけであれば、ほぼ独占ですから、頭を悩ますことはないでしょう。しかし、どの企業も適材適所を求めて人材を探しているのですから、採用が簡単なわけはありません。

経験上、そして、理論上、採用がうまくいかないときには、次の観点でアセスメントをするのが打開策になります。

  1. Resourcing strategy
  2. Requirement
  3. Interview process
  4. Selection criteria
  5. Quality of interviewers
  6. Employer Branding

ひとつずつ見ていきましょう。

1. Resourcing strategey

この観点は、どのチャンネルで人材を探しているのかということです。たとえば、リーガルの人材を求めているとします。外部の人材紹介会社にお願いをしました。いつもお願いをしている会社なのでうまくいくと思ったがなかなか人が集まらない。そこで考えてみた。お願いをしている人材紹介会社は、リーガル人材に強いのか? たとえば、リーガルに特化した人材紹介会社があります。では、いつもお願いをしている人材紹介会社ではなく、リーガル専門の人材紹介会社にお願いしよう。すると、うまく候補者があがるようになります。

2. Requirement

募集をかけた。人材紹介会社も適切だ。でも、候補者が上がってこない。どうしてだろう? 人材紹介会社に聞いてみたら、腹を割って話してくれた。御社の要求内容が多すぎて、こんな人材はあまりいないし、いたとしても、給与が高いので、御社の予算では候補者は見つかりません。

あるあるです。

こんなときは、予算をあげるか、要求事項を見直すか。人材紹介会社に相談にのってもらいながら、代替案となる要求事項を作るのも有効です。

3. Interview process

候補者はあがってくるが、なかなか最後まで至らない。時間ばかりかかってしまって、成果がなかなか上がらない。こんなときは、Interview Processを疑ってみるのが有効だと思います。

たとえば、誰が、どの順序で面接するのか決まっていない。すると、行きあたりばったりで、その都度、面接者が加わったり、面接のステップが増えたりします。こんないい加減なデザインで、採用がうまくいくと思ったら、採用を過小評価していますね。

最初の段階で、いくつのステップで面接をするのか、それぞれ、誰が面接するのか決めれば、それぞれのステップのフォーカスも自ずと決まりやすくなります。すると、意思決定がしやすくなります。

また、候補者に面接のステップを説明することで、透明性が高まり、企業のイメージをよくすることができます。

4. Selection criteria

面接する人によって期待することが違う、役割に対して言っていることが違うと思うことはありませんか? もし、そうだとしたら、その会社は、採用基準があやふやということです。Interview processが最初に決められていないのも原因ですが、そもそも、この役割については、いい人材とはどのような人か明確に鳴っていないと、採用基準があやふやになります。これでは、採用が滞ります。

Job Descriptionを作っておくのは当然ですが、こういう人材は取らないというルールを確立しておくのが有効です。

5. Quality of interviewers

採用がうまくいかないとき、面接者のスキル不足という問題もあります。これは、面接者とHRが同席して、どのような質問をしたか観察し、後でフィードバックすることで向上を図ることが可能です。

面接が下手な面接者は、一般的にYes/Noで答えられる質問をします。また、hypothetical questionといって、仮想的な質問をします。当社に入ったらどのように貢献をしたいですか? これは、この質問を想定していた候補者がよく見えるだけで、実際に今の会社で素晴らしい貢献をしているかどうかはわかりません。現在及び過去の仕事に対して話をさせるような質問が有効です。

加えて、男性だけ、女性だけで面接者を構成するのではなく、男性の面接者と女性の面接者の両方を加えることで、面接者全体のバランスを取ることも可能です。

6. Employer Branding

以前の記事でも書きましたが、候補者に対する会社のブランド価値です。会社の名前をきいただけで、候補者が受けたいと思うようなブランドであれば最高です。しかし、すべての会社が有名なわけではありません。

重要なのは二つです。

まず、候補者のUser experienceです。面接を受けると、良くても悪くても、その結果がすぐに明確に返ってくる会社にはいい印象が残ります。一方、突然面接を入れてきたのに、その結果が一ヶ月経っても返ってこないと、悪い印象しか残りません。User experienceとしては最悪の部類です。User experienceをあげることで、Employer Brandingは高まり、うまく機能します。

もう一つは、会社と、提示している役割をどう売るかです。有名な会社=エキサイティングな仕事ではありません。たとえば、女性の活用が進んでおり、女性のマネジャーもたくさんいる会社は、そのことを採用過程で説明することで、女性の候補者に強くアピールすることができます。また、フレキシブルワーキングが進んでいる会社は、それをアピールに使うこともできます。

この二つを組み合わせて、Employer Brandingを有効に使えば、採用過程全体の後押しをすることができます。

以上、思うことを書きましたが、面接者の魅力も侮れません。採用で会った人がすべて感じがよかったと候補者が感じるというのは、候補者を逃さないという点で有効な側面です。ただ、これに関しては、あなたは魅力が薄いから面接者として向かないと言うのは、だれがやろうと、不適切ですから、せめて、面接者は、候補者に対しては最低限の礼儀をわきまえるようにというアドバイスとしてかえさせていただきます。

Thursday, 18 August 2022

HRに関して思うこと - 007

報酬(Reward)もHRにとっては大切な分野ですね。

給与計算とは違います。

実際、給与計算はアメリカでは経理部で行っているところもあるくらいです。やはり、給与計算はオペレーション的な要素が強いと思います。

報酬は、制度的な側面が強いでしょう。そして、大きく分けると二つに分かれます。

  • Pay 
  • Benefits

Payというのは給与や賞与で、さらに

  • Fixed pay(固定報酬)
  • Variable pay(変動報酬)

に分かれます。

Benefitsというのは、企業年金や健康保険などいわゆる福利厚生を指しますが、フレキシブルワーキングも含まれます。

ところで、報酬の目的は何でしょうか? CIPDではこんなふうに定義しています。

The main reason for offering pay and benefits is to influence employee behaviour so they want to join and stay with an employer and to do their best in the job.

上を読んではっとしました。

狙うのは、望ましい行動を生み出すこと。

もちろん、強制はできないので、報酬をデザインすることで、望ましい行動を社員が生み出すように影響するというのが目的です。

本社人事ではなく、各国の人事として業務に携わっていると、報酬の実際に時間を割くため、いや、このbase salaryは高すぎるだろうとか、promotionするのにbase salaryを与えないのはおかしいだろうとかいう話が多く、逆に、このやり方で、望むべき行動が生まれているのかという本質的な議論はすることがあまりありません。

だからこそ、Country Head of Human Resourcesは時には本質的な議論を課す必要もあるのかなと思いました。

Wednesday, 17 August 2022

HRに関して思うこと - 006

 今日で、採用(Recruitment)に関する雑記は終了しますが……

やはり、採用に関する判断は難しい。人の判断は、時間帯によっても異なるそうです。それだけ、ぶれやすいということなんでしょうね。

だからこそ、採用に関する条件は同じにするべきとのことです。例えば、

  • 職務経歴書を印刷して面接に望むのなら、すべて、印刷した職務経歴書をもたすべき
  • Face to faceで面接をするのなら、全候補者に対してそうすべき。この人はFace to faceで会って、別の人はRemoteというのは条件が異なることになるから避けるべき
  • できるだけ同じ時間帯で候補者を面接するほうがいい
「面接の条件を同じにすることが、フェアな判断を担保する鍵となる」という言葉には、まさにそうだと納得しました。こういう点はHRとして、面接担当者に付加価値を出せる点かなと思いました。

Tuesday, 16 August 2022

HRに関して思うこと - 005

CIPDのドキュメントを読んでいます。

内容は採用。

Structured interviewってありますよね?

GoogleとかAmazonとかがやるインタビューで、質問が最初から定義されており、それぞれを各面接者が行っていくというものです。

ぼくはてっきり、

Structured interview > Unstructured interview

と思っていたのですが、調査ではそうとは言い切れないのだとか。つまり、Structured interviewにも弱点はあるし、Unstructured interviewにも利点があるそうです。

結論としては組み合わせるのがいいそうです。

ということは、

  • HR; structured interview
  • Hiring Manager: unstructured interview

というやり方もいいみたいですね。


Monday, 15 August 2022

HRに関して思うこと - 004

採用は難しいよ。

そんな声を聞きます。

逆に、採用は簡単だよという声は聞きません。

どうしてかというと、判断に関係するからです。

候補者が10年以上にわたって築いてきたキャリア。どんなことを学び、どんな専門性を築き、どんなふうに組織の中で働いて、どんな成果を出してきたのか。

わずか60分と職務経歴書で10年分を判断する。

簡単なわけがないですよね。

逆に、候補者からすると、10年分のすべてをわずか60分と数枚の職務経歴書で表現できるのか。

だからこそ、人材紹介会社が間に入って、生きた情報を提供したりして、付加価値を出す機会があります。

また、候補者も、面接者も、採用面接に先立って準備をします。

というか、準備をしているはずなのですが、実際はどれくらい準備をしているのでしょう?

少なくとも、面接者は二つの観点から準備をしてほしいとHRとしては思います。

  1. 面接の精度をあげる
  2. 会社のブランドを高める

特に二点目は大きいですね。面接者しだいで、いい会社だと思ったり、ひどい会社だと思ったりします。

待たされたあげく、上から目線の面接。

これだと、面接者ひとりの問題が、会社とのエクスペリエンスとして、一人歩きをします。あそこはひどい会社だと。

面接をしてから、結果が全然来ない。

これもいけません。面接をしたら、結果を通知するのが礼儀でしょう。結果を通知しないのは、レスペクトの欠如です。

まずは、やめるべきことを認識して、ひとつずつやめていきましょう。そして、やるべきことをやりましょう。

Employer brandingです。

Saturday, 13 August 2022

HRに関して思うこと - 003

採用(Recruitment)の前に、人員計画(Workforce planning)が重要なのは当たり前ですが、採用が重要でないわけではなく、また、採用が簡単なわけでもありません。

実際、採用に失敗した例は枚挙に暇がないと言ってもいいでしょう。

かく言う私もやらかしてます。二人の候補者から迷って採用したものの、あとから、別の人を採用すればよかったと悔やんだり、この候補者は採用するべきじゃないと言ったにも関わらず、採用が進んでしまい、入社して試用期間が進んだところで、やはり、懸念していた問題が表面化したり……

CIPDでは、採用を次の四つのプロセスに分類しています。

  • Defining the role
  • Attracting applicants
  • Managing the application and selection process
  • Making the appointment

つまりは、

  • 採用するポジション(role)を定義する
  • 候補者を集める
  • 応募のマネジメントと選考
  • オファー・マネジメント

ということです。HR professionalには新鮮でもなんでもなく、知っている内容ですが、分かっているのは、これをすべてしっかりこなすことは簡単ではないということです。

Defining the role

まず、ポジションの定義ですが、わかりやすい成果物は job description つまり職務内容定義です。外資系では当たり前の書類ですが、日本の企業ではそろっていますか? いや、外資系であっても、採用をしたいという割には、まだ、job description がありませんなんてこともあります。

Attracting applicants

候補者を集める方法はいろいろあります。社内の候補者を考慮するというのはすばらしい方法です。また、社外の候補者を集めるのも有力な方法です。会社のウェブサイトに掲載したり、job board に掲載したり、あるいは、人材紹介会社にお願いする方法もあります。

最初に考えた方法で応募があまり集まらないときに打開策を提案するのは、HRの腕の見せ所です。一方で、先に人材紹介会社にお願いをして最終候補者を何名か絞ってから社内の候補者も考慮するというのはお勧めできません。人材紹介会社にとって、時間のムダとなる可能性があり、そのようなやり方を続けていては、人材紹介会社との関係が悪化する恐れがあります。

Managing the applicants and selection process

おそらく一番頭を悩ますのは、このプロセスです。ときに、素晴らしい候補者を見落とすこともあります。逆に、要求とは外れている候補者を選んでしまうこともあります。

なぜ失敗するのでしょうか?

間違った質問をしたというのもあります。本来、job description を作成した時点で、好ましい候補者を定義しているはずですから、まずは、職務内容を経験しているのか、どのような働き方をしているのか、質問を用意しておくべきですが、そうでないケースが多々あります。これでは、そもそも、判断のしようがありません。

さらに、判断に間違うことが多々あります。

結局、人間はさまざまなバイアスにより判断の客観性が脅かされています。人を判断することは、思ったより難しいのです。どうしても、自分に似た候補者を好きになるというのは有名なバイアスですが、これに抵抗することは難しいでしょう。

しかし、あらかじめ、質問・面接者・ステップを決めておけば、こういった間違いは少なくすることができます。

Making the appointment

日本の会社だと、内々定、内定という形ですが、外資系では、次のステップを踏むことが多いと思います。

  • Verbal offer
  • Written offer
  • Pre-employment screening

Pre-employment screeningはリファレンスをもらうというのではなく、候補者のバックグラウンドの確認です。◯◯大学卒業と言っているか、本当だろうか? 職歴に間違いはないだろうか? 中国では学歴詐称は日本の比ではないので、さまざまな国籍の社員を採用する企業は、たとえ日本の企業であっても、Pre-employment screeningは行うほうがいいと思います。個人的には、政党も候補者を立てる前に、こういったチェックを第三者にしてもらうのがいいのではないかと思います。

以上、採用をざっと見ましたが、二人の候補者で迷ったらどうするか?

その時の私の回答はシンプルです。性格または人柄がいいと思う候補者を選ぶことです。

Friday, 12 August 2022

HRに関して思うこと - 002

採用(Recruiting)はやっぱり大切だなと思います。

なんと言っても、HRのLife cycleの最初の方に位置します。「最初」ではなく「最初の方」と言う理由は、本来、HRのLife cycleからすると、一番最初にあたるのは次のものだからです。

Workforce planning

「人員計画」ですね。人によっては、human resource planningと言う人もいますが、それだと、人事部計画と誤解される恐れもあるので、やはり、「workforce planning」です。

Workforce planningの基本は次の英語に要約されていると思います。

Workforce planning is the process of balancing labour supply (skills) against the demand (numbers needed). [...] It's about getting the right number of people with the right skills employed in the right place at the right time, at the right cost and on the right contract to deliver an organisation's short and long-term objectives. (CIPD)

 まずは、人員というよりは人材に関して、社内の需要と社内外の供給のバランスを保つこと。人の数は足りているが、スキルが足りてないのでは、Workforce planningがうまく行っているとは言えません。満たす必要があるのは

  • 人数
  • スキル
  • 採用先(配置先)
  • タイミング
  • コスト
  • 契約形態

最近は、採用に関しては、HRから切り離したり、外部にアウトソースしたりするケースが増えてきているように思います。これは、採用オペレーションという観点からは正しいと思います。

一方で、HRBPには、上で述べたWorkforce planningが残ります。HRBPは自分の担当部署がWorkforce planningを満たしているか常に問題意識をもつことが必要だと思います。一方、Head of HR Japanなら、日本の拠点ににおいてWorkforce planningが満たされているのかという問題意識をもつことが求められていると思います。

基本といえば基本ですが、基本をどれくらいこなしているかがExcellenceにつながるので、少しつぶやいてみました。



Two advocacies

 みなさんは、「advocacy」という英語の単語をご存知でしょうか? もともとは、 動詞の「advocate」から派生した単語です。「advocate」とは「代弁する」という意味です。「advocacy」は代弁、代弁者という意味になります。 HRにはふたつの「advocacy」...